なくなり、宗教家は経典に囚われて生きた人間を忘れ、学者はオーソリチーに囚われる。そして物質界を赤裸々のままで見る事を忘れる。美術家は時に原始人に立返って自然を見なければならない。宗教家は赤子の心にかえらねばならない。同時に科学者は時に無学文盲の人間に立返って考えなければならない。われわれが物理学のかなり深いところを探究しているつもりでも、時々子供や素人から受ける質問が往々にして意外に根本的な物理学の弱点にふれる事を見るのである。
エネルギー保存説の開祖ロベルト・マイヤーは、当時の物理の世界から見ればむしろ旋毛曲りの頑固な田舎親爺であったに相違無い。[#地から1字上げ](大正四年頃)
底本:「寺田寅彦全集 第五巻」岩波書店
1997(平成9)年4月4日発行
入力:Nana ohbe
校正:浅原庸子
2005年3月16日作成
青空文庫作成ファイル:
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