る探究摘発批評の動機が純粋に好意的のものでありたい。不備に対して当事者を攻撃し誹謗《ひぼう》する事よりもむしろ当事者の味方になり、そうして一般読者とともにその不備を除去する方法を講究する機関となる事を心がけたいものである。そういう心持ちがもう少しはっきり現われていさえすれば、現在の新聞でももう少し気持ちのよいものになりはしまいか。
 以上の理想を実現させるためには新聞社はあらゆる実務や学術技芸はもちろん一般思想上の各方面について第一流の人たちを記者として網羅《もうら》しなければならない。これはずいぶん困難な事かもしれない。しかし私は「社会の先導者」としての新聞のほんとうの使命を果たすためには、それはむしろやむを得ない当然の事ではないかと思っている。あらゆる方面の文化の先達となるためには、なるだけの根底を作らなくては無理ではあるまいか。

 このような考えから私の「実験」は一つの夢のような大新聞の設立に移って行った。
 この社の主脳を形成するものは、あらゆる官庁学校商社のみならず、各政党や宗教家思想家のあらゆる団体の代表的人物を網羅したものでなければならない。そしてそれらの社員は単に寄書
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