同じ雑誌にエリク・ノーリンがタリム盆地の第四紀における気候変化を調べた論文がある。これによると、最後の氷河期の氷河が崑崙《こんろん》の北麓《ほくろく》に押し出して来て今のコータンの近くに堆石《たいせき》の帯を作っている。この氷河が消失して、従って新疆地方《しんきょうちほう》に灌漑《かんがい》する川々の水量が少なくなり、そのために土壌《どじょう》がかわき上がって今のような不毛の地になったらしい。この地方には高さ五百メートルほどのなまなましい断層の痕《あと》もあるそうである。こんな地変のために地盤が傾動すれば河流の転位なども当然起こりうるであろう。
もう一度このへんの雪線が少しばかり低下して崑崙《こんろん》の氷河が発達すると、このへんの砂漠《さばく》がいつか肥沃《ひよく》の地に変わってやがて世界文化の集合地になるかもしれない。
その時に日本はどうなるか。欧米はどうなるか。これはむつかしい問題である。しかしとにかく現在の人間は、世界の気候風土が現在のままで千年でも万年でもいつまでも持続するように思っている。そうして実にわずかばかりの科学の知識をたのんで、もうすっかり大自然を征服したつもり
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