み込んでしまって、もはやもとの形は少しも残らなくなっているが、しかし実際はそれらのものの認識がわれわれのからだのすみからすみまで行き渡ってわれわれの知恵の重要な成分をなしているのである。もしもこれらのおとぎ話を、尻《しり》の曲がったごうなの殻《から》にでも詰め込んで丸のみにさせられていたのであったら、とうの昔に体外に排泄《はいせつ》されてどこかよその畑の肥料にでもなっていたことであろうと思う。
[#地から3字上げ](昭和八年十一月、文芸春秋)



底本:「寺田寅彦随筆集 第四巻」小宮豊隆編、岩波文庫、岩波書店
   1948(昭和23)年5月15日第1刷発行
   1963(昭和38)年5月16日第20刷改版発行
   1997(平成9)年6月13日第65刷発行
入力:(株)モモ
校正:かとうかおり
2003年5月29日作成
青空文庫作成ファイル:
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