ーらく女子に対する男子の古き憎悪の主なる理由であつたのであらう。男子は自から許したる恋愛によつて自から堕落したるが如く感じ、又何等の恋愛をも許さゞる時傷けられたるが如く感じたのである。現在に於ける女子の解放は女子の社会的活動及びその恋愛によつて喚起せられたる破壊を通じて男子に新しき逆境をもたらしたのである。斯くして父母はまた温かき家庭の欠乏より苦しみ始めたのである。女子はもはや終日家庭に座して夫の heures perdues(閑散の時)の為めに待することに耐える事が出来なくなつたのである。斯くの如き男子は今まで家庭に全く捧げられた時間といふものを頭に置いてゐた。それは全く理由のない事ではなかつた。彼等は女子が青春時代には愛撫にこれ等の時間を消し、老年には不平と愚痴をもつて過したのを親しく目撃したからである。
併しながらすべての場合に於て精神の親和と友誼の同情とが存在する処には恋愛は過去現在未来を通じて子孫の教育、その他すべての大なる社会的事業に父母の協力として現はれるであらう。若し斯くの如き両親にして単にその子供に生命を与ふるのみにして子供の教育を全然社会に一任するとせば彼等はすべ
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