凍えたからだを運びたいと思った。
 古びた、町の宿屋の奥まった二階座敷に通されて、火鉢の傍に坐った時には、私のからだは何ものかにつかみひしがれたような疲れに、動くこともできなかった。落ちつかない広い室の様子を見まわしながらも、まだ足にこびりついて残っている泥の気味悪さも忘れて、火鉢にかじりついたまま湯の案内を待った。
[#天から12字下げ]――一九一八・一――



底本:「伊藤野枝全集 上」學藝書林
   1970(昭和45)年3月31日第1刷発行
   1986(昭和61)年11月25日第4刷発行
初出:「文明批判」
   1918(大正7)年1月、第1巻第1号
   1918(大正7)年2月、第1巻第2号
※「一二ケ所」「三ケ所」の「ケ」を小書きしない扱いは、底本通りにしました。 
入力:林 幸雄
校正:ペガサス
2002年11月8日作成
青空文庫作成ファイル:
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