ました。しかしそのときには彼女はもう私にかなりな反感を持っていました。他人から注がれた心持に動かされていました。理解の勝れた友達は、私が委細の心持や事情を書けば理解をしてくれる事は私も信じてはいましたが、しかし私はもう話す勇気はありませんでした。そしてそのとき以来、私は自分の事を他人に話すのは止めにしようと思いました。
 私はここに私の過去の事を話そうとは思いません。相変わらず私は自分がこの上侮辱される事は辛抱が出来ないのですから。それで、ただ私が過去の破れた結婚生活から受けた教訓だけをお話ししようと考えています。
 私の最初の自ら進んでした結婚は破れました。それは私にはずいぶん苦い経験です。しかし、この破滅が何から来たかと考えるとき、私はいつも自分に感謝しています。それはただ、私自身の正しい成長の故だといえるからです。そしてこの結婚について自らを責めなければならぬ点は、私があんまり早く結婚生活にはいったからだという事のみです。結婚生活に対する適確な何の考慮をする事も出来ないような若い時に結婚をしたという過失のみです。
 事実、私は結婚をするまでは、あるいはしてからでも、どの方面からい
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