と握られながら、死んだようにぐんにゃりとなっていた。
 日本橋筋一丁目を過ぎたのも知らなかった。
 生魂《いくたま》の石の鳥居のある下寺町を過ぎたのも知らなかった。
 下寺町の暗い焼跡の坂を、登って行くと、やがて電車は上本町六丁目に着いた。
「ここや」
 針助は次郎と三郎をうながして、出口の方へ行くと、次郎をつかまえていた右手を離して、金を払おうとした。
「逃げるンやったら今や」
 次郎ははじめて意識を取り戻して、そう呟いた。が、三郎を残して、自分ひとり逃げては、三郎は可哀想だと思って、じっとしていた。
 そして、金を渡した針助が、再び次郎の手首を掴もうとすると、次郎の方から手を出したくらい、もう何もかも素直に諦めていた。
 針助は電車を降りると上本町八丁目の方へ歩いて行った。七丁目の、もと停留所のあったところに、交番の灯が見えた。
「向うへ連れて行くんやな」
 次郎と三郎はお互の青ざめた情けない顔を見合ったが、針助は黙々として、その前を通り過ぎた。交番の中では、若い少年巡査がきょとんとした眼で、こちらを見たが、べつに誰何しようともしなかった。
 次郎と三郎はほっとした。そして、
「一体どこイ連れてゆくんやろ」
 と思って引きずられて行くと、外語学校前を東へ折れ、四ツ辻まで来ると、南へ曲った。
 そして半町も行った頃だろうか、門燈のあかりが鈍く点っているしもた家の前まで来ると、針助は立ち停った。
「ここや」
 針助は袂から鍵を出して、玄関の戸をあけると、
「――はいれ」
 家の中はひっそりとして、人の気配はなかった。針助の一人ぐらしの家らしい。
 それがかえって、薄気味わるかった。
 次郎と三郎は二階へ連れて行かれた。
 そして、六畳の部屋へ入れられると、針助はカチッと錠をおろして、出て行った。
 階下へ降りて行くらしい針助の足音を聴きながら、三郎はひそひそした声で言った。
「兄ちゃん、どないなるネやろなア」
「さアなア……」
「カンゴクへ行って、赤い著物著んならんか」
「サアなア……」
「母ちゃん今頃どないしてるやろなア」
「分ってるやないか。わいらの帰り待ってるにきまってる」
「母ちゃん心配してるやろなア」
「うん」
 次郎は半泣きの声になっていた。
 その時、階段を登る足音が聴えて、やがて針助がはいって来た。

 はいって来た針助は、ブルブルふるえている次郎と
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