ているのか、京吉には判らなかったが、陽子自身にも判らなかった。恥かしい目に会おうとした悲しみか、京吉もまた自分を侮辱しようとしたのかという怒りか、抵抗の昂奮がさめたあとのすすり泣きか、びっくりしたように京吉が去って行ったあとの思いがけぬ寂しさか、自分をあわれみ、そしてまた京吉をあわれんでいたのか、どんな人間にもある憂愁のノスタルジアだろうか、ヒステリーか――何れにしても、女の涙は男はもちろん女にも判らない。
陽子は京吉がはいって来た気配に、気がつくと、頭をあげて、涙を拭いた。けろりとした顔のようだった。が、声はキンキンと、
「何かご用……?」
「ううう? うん」
口ごもったが、いきなり京吉は手を出して、
「――金かしてくれ。おれ宿屋へ泊る金ねえんだよ。掏られたんだよ」
こんなに遅くなると、もう田村へ帰るのが怖かったのだ。陽子はハンドバッグを投げ出して、
「いるだけ、持ってらっしゃい」
「恐れ入りやの……」
京吉はもう軽薄な口調になって、ハンドバッグから百円札を一枚抜きかけたが、ちょっと思案して、
「――じゃ、これだけ借りるよ」
三百円手につかむと、陽子がふっと微笑したくらい無
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