せていた。
しかし、京吉がいきなり陽子を抱き寄せようとすると、
「あ、京ちゃん、待ってよ。あたしはそんな女じゃないわ」
陽子にとって一番大事なものが自尊心であるとすれば、この自尊心を与えているのは、自分は二十四の今日までたった一つ捨てずに来たものがあるという誇りだった。何れは捨てねばならぬものではあろうが、しかし、それをこんな風に簡単に……。その屈辱と、そして羞恥心と恐怖が、必死の力で京吉を防ぎながら、
「――あッ、京ちゃん、あたしに死ねというの、あたしをそんな女と思ってるの……?」
「だって陽子昨夜キャッキャッじゃなかったじゃねえか」
一人寂しく寝るという意味を「キャッキャッ」に含ませて、昨夜は首ったけ侯爵に許したじゃないか――と、なおも迫ると、
「違うわよ。キャッキャッよ。昨夜はキャッキャッよ。あたしを信じてよ。何でもなかったのよ」
陽子は必死で「キャッキャッ」を口にしていた。
「本当か」
京吉は陽子の眼を覗きこんで、その瞳に自分の醜い表情が夜光虫の光のようにうつっているのを見た。
「本当よ。逃げたのよ。はだしで逃げたのよ。わたしは……」
そんな女じゃないわ――という言
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