ゃないが、困るよ」
「あたしがきらいなんでしょう……?」
「きらいじゃないが、ここにいちゃまずいよ」
「それごらんなさい。きらいなんでしょう」
「…………」
坂野の手前困るんだ――という銀ちゃんの気持は、芳子には判らない。
女というものは、こういう場合、相手が自分を好いているか、きらっているか――という二つのことしか考えず、それ以上のことは考えようとしない。すくなくとも、そんな顔をしている。三時セントルイスで会おうという口実でアパートを追い出されたのは、相手が自分をきらっているせいだ、――という風にひたすら思い込んでしまうのだ。
その証拠に、三時の約束が四時をすぎても来ないではないかと、芳子はもう捨てられた女の顔であった。
もっとも、はじめは銀ちゃんが好きでも何でもなかった。好きで結びついた関係ではない。アルプ・ウイスキーの魔がさした。――というより、酔ったゲップを吐き出すような、まるで冗談まぎれのような結びつきであった。出来心という言葉さえ、大袈裟であろう。ところが、そんな冗談から、もう銀ちゃんが忘れられなくなるという駒が出たのだから、肉体のつながりの不思議さは、われわれの考
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