来たのだった。京吉の行く麻雀屋は祇園の花見小路にあり、アパートからは近かった。
「どうだ、痛くないだろう」
坂野は針を抜き取ると、ペタペタと京吉の腕をたたいた。
「痛いや。そら見ろ! 血が出てやがるぜ」
「血が出て痛けりゃ、鼻血が出せるか。――どうです、木崎さん。おたくも……」
「やって貰おうかな。眠気ざましに……」
木崎の腕に針がはいった時、
「木崎さアン、お電話ア……」
女中の声が廊下で聴えた。
五
名前は清閑荘だが、このアパートはガタガタの安普請で、濡雑巾のように薄汚なかった。おまけに一日中喧騒を極めて、猥雑な空気に濁っていた。
そんな清閑荘の感じを一番よく代表しているのは、おシンというその女中で、ずんぐりと背が低く「ガタガタのミシン」とかお化けとか綽名がついているくらい醜かった。声も醜く、押しつぶされたように荒れていたのは、一日中流行歌をうたっているせいばかりでなく、この女中の生活の荒れでもあった。人間はよかったが品行はわるく、木崎の名を「キジャキ」と発音して、木崎を見る眼がいつも熱く燃えているので、木崎は辟易していた。
おシンはアパートのたれをも好
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