へ行くと、人々はそんな新聞の記事なぞ無視して、甘いものにむらがっていた。「千日堂」のぜんざいも食べてみると後口は前と同じだった。しかし人々は平気で食べている。私はズルチンの危険を惧れる気持は殆んどなかった。
私たちはもうズルチンぐらい惧れないような神経になっていたのか。ズルチンが怖いような神経ではもう生きて行けない世の中になっているのか。
千日前へ行くたびに一度あの娘の地蔵へ詣ってやろうと思いながら、いつもうっかりと忘れてしまうのだった。
底本:「定本織田作之助全集 第五巻」文泉堂出版
1976(昭和51)年4月25日発行
1995(平成7)年3月20日第3版発行
初出:「文明 春季号」
1946(昭和21)年4月
入力:桃沢まり
校正:小林繁雄
2007年4月13日作成
青空文庫作成ファイル:
このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
前へ 終わり
全8ページ中8ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
織田 作之助 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング