ばかりが気になっていたのである。それに彼は、はじめて赤井と鎰《かぎ》屋へ行った晩の、お駒の表情や仕草に良い印象をうけていなかったのだ。
(こんな醜い女と歩いているのが、どうやら俺らしいではないか!)
そう思うと、豹一は一ぺんにお駒と歩くのがいやになった。しかし、そういう散歩はずるずると夏休み前まで続いた。案外気の弱い男だったから、むげにお駒をしりぞけることが出来なかったのである。
二学期が来て、高等学校の生徒がそろそろ鎰屋へ顔を見せる頃になっても、豹一の姿だけが現れないとさすがに分ると、お駒はぽかんとしてしまった。自分の顔がだんだん醜い表情を取り出したので、あわてて化粧をしたりした。
(男というものは二《ふた》月も会わないでいると、もうそのひとを忘れてしまうのだろうか?)こんなことを慰めみたいに考えた。が、豹一のことはなぜか恨む気持になれなかった。(あの人は前途ある高等学校の学生さんだもの、私らを相手にしないのは当り前だ)
妙なところで、豹一は三高であることが役立ったのである。豹一は二ヵ月の休暇を利用して、やっとお駒と離れてしまったということに、少し自責めいたものを感じていた。お
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