ながら、やはり母親に会わす顔がないままにずるずると遠のいて半月も経っていたのである。
 いまさら帰れないと、豹一は背中を焼かれる思いだったが、しかし、もはやそこよりほかに帰って行くところがないというより、なんの前ぶれもなしに突然のように姿を消してしまった自分を、身を切られる想いで心配しているだろう母親のやつれた顔を想えば、足は自然谷町の方へ向いた。
 さすがにいつもの出入口からようはいらず、「野瀬商会」と暖簾の出ている方からまるで質札を売りに来た男のような態度で、こっそりはいった。
 店の間には誰もいなかった。
 かつて時々店番をさせられ、質札を売りに来た客の応待をしていた小さなテーブルによりかかって、暫く躊躇っていたが、やがて、「御用の方はこのベルを押すこと」と無愛想な文句で貼紙されているベルを押した。
「へい――」
 長くひっぱるような声がきこえて、おいでやすと、やがて母親が出て来た。客に見せる愛想笑いを顔に釘づけながら出て来たのだが、豹一の顔を見た途端、その笑がすっと崩れたが、すぐ、こんどはこぼれるばかりの嬉しい表情が泛びあがって来て、唇がわなわなとふるえ、眼に涙が来た。そして、
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