なかった。なぜなら、赤井や野崎のそんな気障っぽさはまるで腹の中ではしゃぎまわっているような、気障っぽさであったから……いうならば、多鶴子のそれのようにつんと乙にすまし込んだ気障っぽさではなかったからである。
 そんな風にけちをつけたがるところ、つまり豹一は量見がせまいというのではなかろうか。たぶん、それに違いはあるまい。もともとの性質がそうなのだから致方のないところだが、ひとつには、彼には物ごとに対するはっきりした意見、つまり人生観だとか思想だとかいうようなものが欠けていたせいでもある。だから、このようにこせこせした意見だけを小出ししているわけだった。衝動的にしか物ごとが考えられず、従って行動出来ず、自尊心の振幅が彼を動かしていたわけであった。
 多鶴子はそんな豹一の表情を見ると、いきなり昨夜の彼の無礼を想い出した。そして、わざわざ彼を電話で呼び出す気になったわけがはっきりとして来た。
 全く、彼女はなんのために再び豹一に会う気になったのか、はっきりわからなかったのである。むろん、昨夜あんな風にされたままでは済まぬという気持はひそかにあった。が、それだけの理由で、彼に会うとは、余りには
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