豹一を家に伴って来たことを、軽はずみだったと、はじめて後悔した。
女中はひそかに心を寄せた男をそんな風に言われたので、ふと悲しくなった。が、さすがに敏感に、多鶴子の怒りを察して、それに順応した。
「ほんとにそうですわね。あんな新聞記者! それになんですわ。生意気すぎますわ。挨拶もせずに帰って行ったりして……」
女中は、豹一が多鶴子に挨拶をして帰ったのか、挨拶もせずに帰ったのか、知らなかった。だから、この言葉は彼女自身のことを言ったに過ぎなかった。ところが、全く多鶴子にとっては、豹一は「挨拶もせずに帰って行ったりして」しまったのである。いや、それどころか、彼女の引止めるのも振り切って帰ってしまったのである。(何か腹の立つことがあったのだろうか?)
考えてみて、なかった。まさか、女中の赤い手を見たのが原因だったとは、気づく筈もなかった。原因がないとすれば、多鶴子にとって全くこれ以上に自尊心を傷つけられることはなかったわけである。しかも、肝腎の新聞記事に就て一言も触れぬさきに帰られてしまったことは、かえすがえす立つ瀬がなかった。
女中の言葉は、だから、多鶴子には余程痛かった。が、多鶴
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