。豹一ははっと赧くなったが、実は豹一に言ったのではなかった。
「おい、美根ちゃん、そんなにおれの顔を見ないでくれ!」
「まあ、失礼!」
「監視せんでも良えぞ。勘定はこの人が払ってくれる。食逃げはせんからね。いつものようには……」
そして、豹一に、「君、勘定を払ってもらった上にはなはだ恐縮だが……」しかし、ちっとも恐縮しているような態度は見せず、にやにやと顎をなでていたが、いきなり、「金を貸してくれ」と、言った。
ずり落ちそうな眼鏡のうしろで、細い眼をしょぼつかせている外観から想像も出来ない、まるで斬り捨てるような言い方だったから、豹一はあっと駭いたが、しかし、さすがに直ぐに言葉をかえして、「いくら?」と、訊いた。
「五十銭で良えです」しかし豹一が財布をあけるのを見て、「一円にして貰おうかな」
結局三円とってしまうと、男は、
「金を借りたからというわけではないが、とにかく自己紹介して置こう。僕は社会部の土門です。土に門と書く。ツチカドとよむのが正しいが普通ドモンとよばれている。ども[#「ども」に傍点]ならんというわけやね」下手に洒落のめした。豹一は土門の言葉の隙間へ、
「僕毛利です
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