ない立派な答案だった。しかも皮肉ったエスプリが出ている。それに、提出の順序も一番だった。早速、豹一のところへ面会の通知が速達された。
四
豹一は他人に与える自分の印象に就いては全然自信がなかったので、面会の通知が来たときもすっかり喜び切ることは出来なかった。面会の時の印象がわるくて不採用になるかも知れないと、かなり絶望的に考えたのである。己れを知るものといえるわけだ。
実際豹一が学校にいた頃、教授達の豹一に対する批評は「態度不遜だ」ということに一致していた。しかしここで豹一のために弁解するならば彼自身教授に対して個人的に不遜な態度をとった覚えはないつもりだった。ただ、教室を軽蔑していた。そしてまた些かの未練も残さずに中途で退学してしまった。つまるところは、「光輝あるわが校の伝統を軽蔑している」ことになったのである。しかし、それにしてもある教授のように、「毛利豹一はおれを莫迦にしている」とむきになるのはいうならば余りに豹一的で、つまり些か大人気ないことではなかろうか。豹一はただ慇懃な態度が欠けていたのだ。他人に媚びることをいさぎよしとしない精神が、彼を人一倍、不遜に見
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