所から、別刷りだと言って、百部ほど刷り上りを持って来た。見ると、「本邦畳史」が相当大きな見出しで載っていた。
「別刷りというのもあるんですね」と豹一はそれとなく社長に訊いてみた。
「へえ、おまっせ」社長はアルミの金盥にいれた糊をしきりにこねまわしながら、ぼそんとした声で言い、そして、「こら内緒やが――」最近当局の新聞取締がきびしくなり、むやみに広告の段数をふやすことが出来なくなったので、検閲係や官庁へ提出用の分として、広告の段数を減らし、記事の段数をふやした別刷りの新聞をつくって置くのだと、社長は説明した。
「君、御苦労やけど、別刷りの新聞二部、府庁の特高課へもって行ってんか」
「今直ぐですか」反射的にそう言ったが、むろん怒ったような声だった。
「ああ、今直ぐ行ってんか」
「いやです!」大袈裟に言えば、一年半こらえにこらえて来ただけの声の響きはあった。豹一自身、われながら満足出来る声だった。少くとも辞職の瞬間に相応わしいような声だと、思った。自分の記事が別刷りの埋草だけに使われたということへの怒りが、この気持に拍車を掛けた。社長の痩せた貧相な顔を見ると、さすがに気の毒な気もしたが、しか
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