んだ。中指に桃色のペンだこが出来たのを、情けない気持で見ながら、年中帯封を書かされるのなら、やり切れぬなと思った。
(働くとはこんなに辛いものか)とすっかり驚いた気持で、しきりに無味乾燥なその仕事を続けていると、三時が来て、社長の妻君がお茶をいれてくれた。貪るように啜っていると、社長が褌一つの裸で二階から降りて来て、
「こない日が射し込んで来よったら、毛利君かなわんやろ。もう直き簾をはりこむぜ。――どないや、帯封何枚ぐらい書けた?」
「六百枚位でしょう」
「そら早い。商売人なみや」
 褒められたと思ったので、「帯封書きはえらいですね」と、微笑しながらお愛想にそう言うと、
「明日からほかの仕事してもらうぜ。月給はろて帯封書いて貰てたらうちの損や。商売人に頼んだら千枚なんぼで安う書いてくれよるネやから」
 豹一はむっとしたが、同時に助かったという気持もした。その日一日中帯封を書いて、五時過ぎ、台所で手を洗って、「そんなら、帰らせていただきます」くたくたになって帰った。
 翌朝眼を覚した時、今日も一日働くのかと思うと、怖いような気持がした。寝床の上にぼんやりと坐ったまま、なぜか紀代子や鎰屋の
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