寒い風が忍び込んで来た。そして私のさびしい心の中をしずかに吹き渡った。それが私を悲しませた。
 一週間すると、金木犀の匂いが消えた。黄色い花びらが床の間にぽつりぽつりと落ちた。私はショパンの「雨だれ」などを聴くのだった。そして煙草を吸うと、冷え冷えとした空気が煙といっしょに、口のなかにはいって行った。それがなぜともなしに物悲しかった。



底本:「日本の名随筆19・秋」作品社
   1984(昭和59)年5月25日第1刷発行
   1991(平成3)年9月1日第12刷発行
※底本は、物を数える際や地名などに用いる「ヶ」(区点番号5−86)を、大振りにつくっています。
入力:渡邉つよし
校正:今井忠夫
2000年10月13日公開
2003年6月1日修正
青空文庫作成ファイル:このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
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