育ててやる。もう、お前みたいな情けない奴に、この子のことは任せて置けん。出て行ってくれ。出て行け! 暗うなってからやと夜逃げと間違えられるぜ。明るいうちに荷物もって出て行ってもらおか」
「ああ、出て行くとも」
 オトラは荷物をまとめて本当に出て行った。
「おばちゃん、どこイ行くねん」
 と、君枝が随いて行こうとするのを、他吉はいつにない怖い声で、
「阿呆! 随いて行ったら、いかん。どえらい目に会わすぜ」
 それきりオトラは顔を見せず、他吉はサバサバした。
 朝日軒のおたかはなにか昂奮して、おからを煮いて、もって来た。
 ところが、他吉が芸者やヤトナの悪口を言ったというので、同じ路地の種吉との間にいざこざが持ち上った
 種吉は河童路地の入口で、牛蒡、蓮根、芋、三ツ葉、蒟蒻、紅生姜[#「姜」は底本では「萋」となっている]、鯣《するめ》、鰯など一銭天婦羅を揚げ、味で売ってなかなか評判よかったが、そのため損をしているようであった。
 蓮根でも蒟蒻でも随分厚身で、女房のお辰の目にひき合わぬと見えたが、種吉は算盤おいてみて、
「七厘の元を一銭に商って損するわけはない」
 しかし、彼の算盤には炭代や
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