は二十歳で、玉堂の顔を見ると、ぷいと顎をあげて、出て行き、彼はちょっと寂しかった……。
 それを想い玉堂は赧くなったが、すぐもとのにやにやした顔になると、
「いったい乗せたのか、乗せなかったのか、どっちなんだね?」
 と、言った。
「それ訊いて、どないするちゅうネや」
 さからっていると、もう炬燵のなかに、はいっていた君枝が、むっくり起き上って、
「三味線もったはるおばちゃんやったら、乗らはった、乗らはった」
 と、言った。
「そやったかな。よう覚えてるなあ」
 他吉が言うと、君枝は、
「そら覚えてる。うしろから随いて走ってるわてが可哀想や言うて、どんぐり(飴)くれはったさかい」
 いつにないはきはきした声だった。
「それじゃ、やっぱり、そうだったのか」
 玉堂は大袈裟にうなずいて、
「――実は他あやん、その婆さんというのが、僕のいる館《こや》の伴奏三味線を弾いている女でね」
「それがどないしてん? なんぞ、俥のなかに忘れもんでもしたんか? そんなもん見つかれへんかったぜ」
「まあ、聴きイな」
 彼女は御蔵跡の下駄の鼻緒屋の二階に亭主も子供も身寄りもなく、ひとりひっそり住んでいる女だが
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