へ手エ入れるもんやあれへん」
 すると、手を出して爪を噛むのだ。
「汚《ばばち》いことしたらいかん。阿呆!」
 呶鳴りつけると、下駄を脱いで、それを地面へぶっつけ、そして、泪ひとつこぼさず、白眼をむいてじっと他吉の顔をにらみつけているのだ。
 他吉はがっかりして子供のお前に言っても判るまいがと、はじめて小言をいい、
「お前はよそ様《さん》の子供|衆《し》と違《ちご》て、両親《ふたおや》が無いのやさかい、余計……」
 ……行儀よくし、きき分けの良い子にならねばならぬ、家で待っているのは淋しいだろうが、そうお祖父《じ》やんの傍にばかし食っついていては万一お祖父やんが死んだ時は一体どうする、ひとり居ても淋しがらぬ強い子供にならねばいけない、あとひとり客を乗せたら、すぐ帰る故、「先に帰って待って……」いようとは、しかし、君枝はどうなだめても、せなんだ。
 他吉は半分泣いて、
「そんなら、お祖父やんのうしろへ随いて来るか。辛度《しんど》ても構《かめ》へんか。俥のうしろから走るのんが辛い言うて泣けへんか」
 そして、客を拾って、他吉が走りだすと君枝はよちよち随いて来た。
 他吉は振りかえり、しばし
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