柳原《やなぎわら》の福寿狸《ふくじゅだぬき》 柳森神社
 土製の小さき大小の狸を出す。神田柳原|和泉《いずみ》橋の西、七百二本たつや春|青柳《あおやぎ》の梢《こずえ》より湧《わ》く、この川の流れの岸に今|鎮座《ちんざ》します稲荷《いなり》の社に、同社する狸の土製守りは、この柳原にほど近きお玉が池に住みし狸にて、親子なる由、ふと境内にうつされたる也。(お玉が池の辺《あたり》開け住みうかりければやといふ。)親は寿を、子は福をさづけんと託宣《たくせん》ありしよりその名ありとなん。
 この狸の形せる物は、玩具といはんより巳《み》の小判、蘇民将来《そみんしょうらい》の類にて神守りの一つなりと思へり。[#地から1字上げ](大正十四年五月『鳩笛』第三号)



底本:「梵雲庵雑話」岩波文庫、岩波書店
   1999(平成11)年8月18日第1刷発行
※ルビを新仮名遣いとする扱いは、底本通りにしました。
※「雑司《ぞうし》ケ谷《や》」の「ケ」を小書きしない扱いは、底本通りにしました。
※各編小題は底本ではゴシック体で表記してあります。
入力:小林繁雄
校正:門田裕志
2003年2月9日作成
青空文庫作成ファイル:
このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
前へ 終わり
全2ページ中2ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
淡島 寒月 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング