が中等教育の東洋歴史とか云ふお話があつたさうで、されば少し目先を變へて、學問に關係の有るお話を申す方が、却つて宜いかとも考へて、取敢へず昨日この題を極めた譯であります。暑い時分にむづかしい話は禁物と云ふことは、勿論承知致して居る。また僅か一時間で、六ヶ敷い話のしやうもありませぬ。其點は御安心下さい。
 さて近頃のやうに、交通の便利が開けた時代は別として、交通の開けない不便な時代でも、矢張り東洋と西洋との間には、宗教上或は政治上・商業上の關係からして、相互の交通が開けて居つて、自然東洋の文化と、西洋の文化とが、互に影響して居ることは明白な事實であります。或る時には東洋の文化が西洋に影響したこともあり、又或る時には其反對に西洋の文化が東洋に影響したこともある。確か昨年の秋十月だと思ふが、『新日本』と云ふ雜誌が、東洋人と西洋人と、何方がより多く世界の文化發展に貢獻致して居るか、即ち何方が今日までの世界の文化發達に、より多く力を寄與して居るかといふ題を掲げて、所謂名士とか申す各方面の人々の解答を求めたことがありました。その雜誌にはこの問題について、種々の解答を掲げてありますが、併し此問題はさう
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