[#二]虎穴[#一]不[#レ]得[#二]虎子[#一]といふ警句を以て、その同伴者を激勵いたし、三十六人にて匈奴の一行を夜襲して、その正副使以下を鏖《みなごろし》にした。この蠻勇に恐怖して、※[#「善+おおざと」、第3水準1−92−81]善王は遂に漢に降服した。

         二

 明帝は班超の成功を嘉納せられ、改めて彼に西域經營を命ぜられた。班超は依然三十六人の小勢にて、※[#「善+おおざと」、第3水準1−92−81]善の西なる于※[#「門<眞」、第3水準1−93−54](今の和※[#「門<眞」、第3水準1−93−54])王を屈服せしめ、その翌年(西暦七四)には、謀を設けて、頑強な疏勒(今の喀什※[#「口+葛」、第3水準1−15−20]爾《カシユガル》)王を擒にして居る。かくて班超は僅々二年の間に、西域の半ばを平定したが、永平十八年(西暦七五)に明帝崩じて、その子の章帝が位に即かれた。この機會に乘じて、西域諸國は連合して、漢の勢力を摧破することを企てたから、章帝も一時西域經營を中止して、班超を召還した。折角の功業を一旦に廢棄せなければならぬ、班超の遺憾は想像に餘りある。幸に彼の
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