第にキリスト教國や、マホメット教國の間に傳はり、又此等遠西の諸國民も極東に觀光して、その見聞を公にした。此等の見聞録の中には支那の風俗世態等に關して、往々本國の記録に見當らぬ貴重な材料を供給するものも尠くない。極東に關係あるギリシア、ラテンの記録は、略 〔Coede`s〕 氏の 〔Textes d'Auteurs Grecs et Latins relatifs a` L'Extre^me−Orient〕 に備はり、マホメット教徒の記録――その地理に關係ある部分を主としてあるが――は、大體 Ferrand 氏の 〔Relations de Voyages et Textes ge'ographiques Arabes, Persans et Turks relatifs a L'Extre^me−Orient〕 に纏められてある。
 ギリシア、ラテンの記録は、しばらく措き、マホメット教徒のそれは中々價値が多い。數あるマホメット教徒の記録の中で、その内容の豐かなる點より觀ても、將た又その年代の古き點より觀ても、所謂『印度支那物語』を第一に推さねばならぬ。この物語は前後の二篇に分かれ、前篇は 
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