蒙古人は極めて物を少量しか食ひませぬから是れが戰爭のとき非常に都合が好いのであります。のみならずどんな物でも食ふのですから是れは尚更戰爭中には都合が好いのです。
前に言ひました所のプラノ・カルピニといふ人の記録によると、蒙古人は毎朝稗の粉に水を混ぜた物を一杯飮んで、一日を過ごす。稗の粉に水を混ぜて、それを一杯飮んで、もうそれで一日何にも食はない。とても外國人では想像することの出來ない程小食である。一日や二日必要に應じて何にも食はずとも平氣である。二日位絶食しても決して何とも言はない。鼻歌を唄つて平生の通りで嬉々として居るといふことです。蒙古人は戰爭中殊に敵を追撃する場合、例へば先般の奉天方面の追撃とか、さういふ場合には何にも持たずに飛ぶです。それから空腹になると自分の乘つて居る馬から降りて馬足を刺絡します。馬は非常に駈けて十分充血して居ります故に、其馬の足の血を啜つて其上へ乘つて十日位そんな風にして戰爭に從事するです。からして兵站部が後ろの騎兵に襲はれたから何うとか斯うとかいふやうな戰術の發達した今日の贅澤な兵と同一には出來ない。騎馬は上手であるし、途中で飯がなくても今のやうな方法で
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