印度へ行く目的でコロンブスが西の方から出て遂にアメリカの方へ到着したのであります。
 唯に東洋史上に於ての興味ある時代であるのみならず、恐らく世界史の中でも蒙古時代ほど面白い時代はなからうと思ふ(拍手)。盛に四方を征伐して大いなる舞臺に活動したことはギリシアのアレキサンダーもあるし、ローマのシーザーもあるし、それから以後にも種々の英雄豪傑が澤山出て居りますけれども、其等の人々の事業は蒙古人の其に比べては殆ど太陽の前の星のやうなもので、到底比較にならぬのである。併しながら私は今日斯では蒙古人が、どんな大きな事業を立てたか、どんな戰爭をしたかといふことは言はない。それは普通の東洋史を習ふ時にも大抵聽き居ることと思ふ。例へば成吉思汗《ジンギスカン》が西域を征伐したとか、速不台《スブタイ》、哲別《チエベ》らがロシアの方を征伐したとか、或はそれから十年餘り經つてから成吉思汗の孫に當る拔都《バツ》がロシアからハンガリー、ドイツ或はイタリーまで侵入して行つた話とか、或は又それから殆ど二十年ばかり經つて成吉思汗の同じく孫に當る旭烈兀《フラグ》といふものがペルシアからシリア征伐に出掛たなどといふこともあ
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