忘我の境に入ると雖も、荒凉慘澹、寧ろ耳を掩ふに遑あらず、詩豈活きざらむや。
吁嗟かくばかり覊軛ある世に、詩《うた》のみぞひとり自由なりける、天は彼より一切を徴して、代ふるに最も自由なるものを以て授く、彼亦聊か安んずるところなかる可らず、彼は終始常陸の僻邑に蟄居して、識を所謂中央文壇に求めざるを以て、彼の詩或は多く世に知られざらむ、友人某、々、々等深く之を遺憾とし、其詩集を公にせむことを勸む、我亦與かる、彼曰く、我世に望むところなし、只この一小册子を、垂白の慈母に、献じ、その※[#「女+兪」、第3水準1−15−86]容喜色を見るを得ば則ち足れりと、蓋し彼の慈母は彼の最大同情者にして、亦彼が敬愛する最初の人也、彼の詩を識ること、最愛吟誦者なる我等諸友人に讓らざればなり。
彼の詩はかくの如くして作られ、輯められ、刊行せらる、彼を江湖に紹介するものは彼自身の詩也、彼の詩を世に問ふに至りたるは我等諸友人也、即ち茲にその始末を記して、序となす。
[#地から2字上げ]辱知 小島烏水識
[#瀧澤秋暁(1875−1957)の序文あり]
[#河井醉茗(1874−1965)の序文あり]
わたく
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