(この戯曲に於て、ベルギイの詩人は人類社会の甦生の希望を述べている。オビドマアニュの市街が敵軍に包囲され、そのうちに、攻防両軍の革命家が叛乱を起したため、ついに戦いが終了するのである。)
レオ・トルストイ――「セバストポール」「戦争と平和」「想いおこせ」等
フセオロド・ガルシン――「卑怯者」「愚かなイワノフの覚書」「四日間」
レオニイド・アンドレーエフ――「赤き笑」
それから仏蘭西の小説家ギイド・モウパッサン、ジョセフ・アンリ・ロスニイ、人道主義者ロマン・ロオラン、英吉利の戯曲家、バナアド・ショウ、アメリカの詩人、ホイットマン、等も、或は激烈或は皮肉、或は悲痛な調子で戦争に反対している。
独逸の表現派になると、世界大戦後に発生したものだけあって、戦争反対のものがなか/\多い。
ハアゼンクェフェル――「アンティゴオネ」(希臘劇を改作したものであるが、彼はこれを大戦に結びつけ、タレオンを、前の独逸皇帝ウィルヘルム二世に擬し、戦争のために寡婦となったもの、孤児となったもの、不具となったものをして王に向って飢餓と傷痍を訴えさせ、「将軍を市場に晒せ」と絶叫せしめている。)
フランツ・ウェルフェル――「トロヤの女」(戦敗者の悲惨と戦勝者の残酷とを愁訴したものである。)
エルンスト・トルレル――「独逸男ヒンケルマン」「変転」(独逸男ヒンケルマンは戦争で睾丸を失った男の悲痛な生活を書いたものであるが、多分に人道的である。)
ラインハルト・ゲエリング――「海戦」(海戦の中の第五の水兵は叛乱の志を持っている。)
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第五水兵。俺たちは何のために今戦っているんだ。
第一水兵。海上を自由にするためだ。
第五水兵。じゃ、そのために母親はお前を養ったんだな、じゃ、それがお前の魂の意味なんだな。そのためにお前の身体は大きくなったんだな。
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(中略)
声々。祖国、祖国、何をまた俺達から欲しいんだ。祖国、祖国、死が俺たちを氷のように貪り食べる。俺たちが此処に斃れるのを見て呉れ、祖国。俺たちに死を与えろ、死を、死を、死を与えろ、死を。
(爆発。第一、第四、第五水兵はもぎ取られた瓦斯除けマスクをつけて死にながら横たわる)
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表現派は、主観主義である。だから、ゲエリングは、反戦的ではありながら、本
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