んな事を言つて入らつしやるやうですが、その事もイワン君は言つてゐました。イワン君は僕にも来ないかと云ひました。無論あなたの方は義務で行かなくてはならないのですが、僕が行けば、好意で行くのです。イワン君はさう云つたんですよ。※[#「魚+王の中の空白部に口が四つ」、第3水準1−94−55]の体は非常に伸縮自在だから、二人には限らない、三人でもゐられると云つたのです。それはあなたと僕とを引き取る事も出来ると云ふ意味でせう。」
 妻君は呆れた様子で、妙な目をして己の顔を見た。「三人一しよに這入つてゐるのですつて。まあ、どんな工合でせう。あの、宅とわたしとあなたと三人ですね。おほゝゝ。まあ、宅も宅だが、あなたもとぼけて入らつしやる事ね。おほゝゝ。さうなれば、わたしのべつにあなたをつねつてゐてよ。ようございますか。おほゝゝ。」余程|可笑《をか》しいと見えて、細君は体を前へ乗り出して笑つてゐたが、とう/\目から涙が出た。
 その細君の笑つて涙を飜《こぼ》す様子が如何にも可哀らしかつたので、己は我慢が出来なくなつて、細君の小さい手を握つて、手の甲に接吻した。
 細君は別に厭がる様子もなく、接吻させてゐ
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