分までが、いつのまにかふわりふわりとんでいる。ふと見ると、おかあさんがこっちを見ながら、さもうれしそうに笑《わら》っている。
「ママ、ママ。ああなんていいとこだろう、ここは。」と、少年は声をはりあげて、また子どもたちとキスをする。早くこの子たちに、あのガラス窓《まど》の中の人形のことを、話してやりたくってたまらない。「きみたちは、どこの子なの。あんたは、どこの子なの。」と、すっかり
にこにこしながら、少年はたずねる。
「これは、エスさまのクリスマス・ツリーなのよ。」と、子どもたちは答える。「エスさまのところにはね、この日には、いつもきまって、クリスマス・ツリーがあるのよ。それは、あすこで自分のクリスマス、ツリーのない小さな子どもたちのために、立ててあるのさ。」
だんだん聞いてみると、その男の子や女の子は、みんな自分と同じような身のうえの子どもばかりだった。中には、どこかの役人《やくにん》のうちの入口のところに、かごに入れたまま捨《す》て子にされて、こごえ死《し》んだのもいるし、乳母《うば》にそえ乳《ぢ》をされながら、息《いき》がつまって死んだ子もいる。大|飢饉《ききん》のときに、乳《
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