ある僧正であった。部屋の正面の隅には幾つもの聖像が安置されて、夜になるとその前に燈明があげられたが、それは信心のためというよりは、夜分部屋の中を明るくするためであった。フョードル・パーヴロヴィッチは毎晩たいへん遅く、夜明けの三時か四時に寝につくので、それまでは部屋の中を歩き回ったり、肘椅子に腰かけて考えごとをするのであった。それが癖になってしまったのである。彼はよく召し使いを傍室《はなれ》へさげてしまって、まるきり一人で母家に寝ることがあったけれど、たいていは下男のスメルジャコフが毎晩、彼の身辺に居残って、控え室の腰かけの上で寝ていた。アリョーシャがはいって行ったときには、もう食事が済んでジャムとコーヒーが出ていた。フョードル・パーヴロヴィッチは食後に甘いものを食べてコニャクをやるのが好きであった。イワン・フョードロヴィッチもやはり食卓に向かってコーヒーを飲んでいた。従僕のグリゴリイとスメルジャコフが食卓のそばに立っていた。どうやら主人側も召し使いのほうも、目にみえてひどく愉快にはしゃいでいるらしかった。フョードル・パーヴロヴィッチは大きな声で笑ったり、にこにこしていた。アリョーシャは
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