うしてあの女にそんなことが言えるもんか?」
「それで、兄さんはどこへ行くんです?」
「路地へさ」
「じゃあグルーシェンカのところへですね!」アリョーシャは手を打って、悲しそうに叫んだ。
「では、ラキーチンの言ったのは本当だったのかしら? 僕はまた、兄さんはちょっと行ってみただけのことで、もう済んでしまってるのだとばかり思っていたのに」
「許婚の男が、あんなところへ行くんだって? そんなことができるもんかい? しかも許嫁がいて、みんな見てるところでさ? おれにだって少しは廉恥心があるはずだよ。ところが、グルーシェンカのところへ行き始めると同時に、おれはもう許婚でもなければ、誠実な人間でもなくなってしまったんだよ。それはおれにもわかってるのさ。どうしてそんな眼でおれを見るんだい? おれは最初、ただあの女をひっぱたきに行ってやったのだよ。それは、親爺の代理人をしてやがるあの二等大尉のやつが、おれの名義になっている手形をグルーシェンカに渡して、おれが閉口して手を引くように告訴してくれって頼んだということを、聞きこんだからだ。それが確かなことは、今でもわかってるよ。おれを脅かそうとしやがったのさ
前へ
次へ
全844ページ中339ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
ドストエフスキー フィヨードル・ミハイロヴィチ の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング