何かちょっと打ち合わせておくこともできる。しかし、兄ドミトリイは、かなり遠方に住んでいるし、やはり今はおそらく留守らしい気がした。一分間ばかりその場にたたずんでいたが、ついに彼はきっぱりと心を決めた。あわただしく習慣的な十字を切ると、すぐに何かにっこり一つほほえんでから、彼は自分にとって恐ろしいその婦人のもとへ敢然として歩き出した。
彼は女の家をよく知っていた。しかし、大通りへ出て広場を通ったりなどしていたら、かなり道程が遠くなるのであった。小さい町のくせに、家がまばらに建っているので町内の距離はいいかげん大きいのである。それに父親も彼を待っていて、ことによると、まだ例の言いつけを忘れないで、またしても気まぐれなことを言いださぬとも限らないから、彼方へも此方へも間に合うようにするにはずいぶん急がなくてならない。かれこれ思い巡らしたあげく、彼は裏道を通って道程を短縮しようと心に決めた。彼は町内のそうした抜け道を五本の指のようによく知っていた。裏道といえば荒れ果てた垣根に沿って、ほとんど道でない所へ通じているので、どうかすると、よその籬《まがき》を踏み越えたり、よその庭を突き抜けたりしな
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