ノことずけるから、そいつを見せてくれ、男はゴルスツキンだが、本当はゴルスツキンじゃなくてリャガウイだ、しかし、おまえあいつに向かってリャガウイなんて言っちゃいかんぞ、怒るからな、もしあいつと談判をして、うまくいきそうだったらすぐ手紙をよこしてくれ、ただ『嘘ではない』と書きさえすりゃいいんだよ。初め一万一千ルーブルで頑張ってみたうえで、千ルーブルくらいは負けてやってもいい。しかし、それよりうえ負けちゃいかんぞ、まあ、考えてもみろ、八千ルーブルと一万一千ルーブル――三千ルーブルの開きじゃないか。この三千ルーブルは全く目つけものなんだよ。それに、またといって、なかなか買い手はつきゃせんし、今さしずめ金には困り抜いてるんだからなあ、もしまじめな話だという知らせさえあれば、その時はわしが飛んで行って片をつけるわい、なんとかして暇を見つけるさ。しかし、まだ今のところでは、坊さんの思い違いかもしれんからなあ、わしがわざわざ出かけてもしようがないよ」
「ちょっと、そんな暇がないんですよ、堪忍してください」
「まあさ、親爺の言うことも聞いてくれ、恩に着るぞ! おまえたちはどいつもこいつも不人情なやつばかりだよ、本当に! 一日や二日どうだというんだい? いったいおまえは今どこへ行こうってんだ、ヴェニスへでも行くのかい? なあに、おまえのヴェニスは二日のあいだになくなりゃあせんよ。アリョーシャをやってもいいのだが、こんなことにかけては、アリョーシャじゃしようがないて、おまえだけだよ、賢い人間は、それがわしにわからんと思うのかい? 森の売り買いこそしまいが、眼力をそなえておるからなあ、ただあの男が本当のことを言っとるかどうかさえ、見抜きゃいいんだ。今も言ったように髯をみるんだ。髯が震えてたら本当なんだから」
「お父さんは自分からあのいまいましいチェルマーシニャへ、僕を追い立てるんですね? え?」と、イワン・フョードロヴィッチは無気味な薄笑いを浮かべながらどなった。
 フョードル・パーヴロヴィッチはその無気味なものだけには気づかないで、あるいは気づくことを欲しないで、ただ薄笑いのほうだけを取りあげたのである。
「じゃあ、行ってくれるんだな、行ってくれるんだな! すぐに今一筆書いてやるからな」
「わかりませんよ、行くかどうか、まあ途中で決めましょうよ」
「途中でとはなんだ、今決めるがいい、な、
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