り明るい色をした格子縞《こうしじま》で、きわめて薄っぺらな地であった。下の方がすっかり皺くちゃになっているので、裾がつり上がって、まるで子供のように足がつき出ていた。
「僕は……アレクセイ・カラマゾフです……」とアリョーシャは答えた。
「それはよく承知しておりまする」そんなことを聞かなくとも、客の何ものかはよく知っていたと悟らせるかのように、男はすぐにさえぎった、「ところで、私はスネギーレフ二等大尉でございますが、それにしても、どういう子細があってお越しになったかお伺いいたしたいものです……」
「なあに、僕はちょっとお寄りしてみただけなんです、実のところ、たったひとことあなたに申し上げたいことがあるんですが……。おさしつかえございませんでしたら……」
「そういうわけなら、ここに椅子がございますから、さあ、どうぞ、その場に。これは昔の喜劇の中でよくいうやつでございますよ、『どうぞその場に』なんかと……」言いながら、二等大尉はすばやく空の椅子をつかんで(それは全く木ばかりで造った、よくよく不細工な椅子で、何も張ってなかった)、それをほとんど部屋のまん中の辺に据えて、やがて、自分がかけるために、もう一つ同じような椅子をとって、アリョーシャの真向かいに坐ったが、前と同じように膝と膝とがすれ合うほど接近していた。
「ニコライ・スネギーレフと申し、昔は露国歩兵二等大尉でござりましたが、身持ちのよくないために、恥をかきましてね、それでもやはり二等大尉なんでして。しかし、スネギーレフというより、むしろ二等大尉スロヴォエルソフといったほうがわかるくらいでございますよ。なぜと申すに、わたくしは後半生に至ってスロヴォエルスばかりで話をするようになったもんですからね。このスロヴォエルスはたいてい落ちぶれてから口癖になるものでして……」
「いかにも御もっともです」とアリョーシャはほほえみを浮かべた、「しかし、何気なくお使いになるおことばですか、それとも、ことさらに?……」
「誓って申しますが、何気なくなんですよ。いつも言ったことなんかなかったのでして、長いことスロヴォエルスで話したことなんかなかったのですが、急に落ちぶれて、いつの間にかスロヴォエルスを言い始めていたのです。これは神様のお力でなることでございますよ。お見受けしたところ、あなたは現在の問題に興味を持っていらっしゃるようでございま
前へ
次へ
全422ページ中291ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
ドストエフスキー フィヨードル・ミハイロヴィチ の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング