、まるであなたそっくりでしたわ。だけど、もう行きましょう、行きましょう。アレクセイさん、あなた大急ぎであの頼まれたところへいらっしゃい、そしてすぐ帰ってらっしゃい。リーズ、何か用はなくって? 後生だから、一分間でもアレクセイさんを引き留めないでおくれ、すぐにおまえのところへ帰っていらっしゃるんだから」
 ホフラーコワ夫人はやっとのことで、駆け出した。アリョーシャは出て行く前に、リーズの部屋の戸をあけようとした。
「どんなことがあってもだめよ!」とリーズは叫んだ、「今はもう、どんなことがあってもだめよ! そのまま、戸の向こうからお話しなさい。あなたはどうして天使のお仲間入りをしたの! わたしそれ一つだけは、聞かしていただきたいの」
「ひどくばかげたことをしでかしたからですよ! リーズさん、さようなら!」
「あなたはよくまあ、そんな帰り方ができますわね」とリーズは叫んだ。
「リーズさん、僕にはほんとに悲しいことがあるんです! すぐ帰って来ますが、僕には、とても悲しい悲しいことがあるんです!」と言って、彼は部屋を駆け出して行った。

   六 小屋における破裂

 事実、彼にはいまだかつて、めったに経験したこともないような、なみなみならぬ悲しみがあった。彼は出しゃばって、『愚かなことをしでかした』のだ、――しかも、どんな世話を焼いたのか? 愛に関したことではないのか? 『いったいあんなことについて、自分に何かわかるのか、この事件について、何が僕に解釈がつくのか?』彼は顔を赤らめながら、心の中で百度もくり返すのであった、『ああ、恥ずかしいくらいはなんでもないんだ、それは僕にとって当然の罰だ。――やっかいなのは、僕が必ず新しい不幸を生む元になるということだ、――長老様が僕をお寄こしなすったのは、みんなを仲なおりさせていっしょにするためだった。ところで、ところで、こんな一致のしかたでいいものか?』ここで、彼は急にまた『二人の手を結び合わす』と言ったことを思い出して、またもや恥ずかしくなってきた。『僕は全く誠意をもってしたんだけれど、これから先はもっと利口になることだ』と彼は不意に決心したが、その決心に対しては微笑だもしなかった。
 カテリーナの頼みは湖水通りとのことであったが、ちょうど兄のドミトリイはその道筋の、湖水通りから遠くない横丁に暮らしていた。アリョーシャはとにもかくに
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