て、きれぎれなものになったでしょうが、あなただったから違うのです。ほかの女だったら、嘘になったでしょうが、あなただったから正しいのです。僕はなんと理由をつけたらよいかわかりませんが、あなたがこのうえもなく真心があり、それゆえにまた正しいということは、ようくわかってます」
「でも、それはただこの一瞬間だけじゃありませんか……しかも、ほんのこの一瞬間というのは、どんなときでしょう? 何もかも昨日の侮辱、――それがこの一瞬間というものの意味なんです!」見受けたところ、さし出がましいことを言うまいと決心していたらしいホフラーコワ夫人も、こらえきれなくなって、不意にかなりに正当な意見を述べた。
「そうです、そのとおりです」話の途中に口を出されたのが不服だったらしく、イワンは急に一種の熱をもって、さえぎった、「全くそうです、しかし、ほかの人であったら、この一瞬間も、要するに昨日の印象にすぎないかもしれません、ほんの一瞬間にすぎないかもしれません。しかしカテリーナさんのような性格のおかたは、この一瞬間は、ついに一生涯に及ぶはずです。ほかの人には、ただの約束にすぎないようなことが、このかたには永久に変わることのない、つらい、苦しい、おそらく、たゆむことのない義務になるのです。カテリーナさん、あなたの生活は、今のうちこそ、自分の感情や自分自身の手柄や、悲しみに包まれて、つらいでしょうけれど、そのうち、この苦しみはだんだんに柔らいでいって、ついには、きっぱりした、誇るべき企てを永久に果たしたという楽しい思いに満たされるようになりますよ。たしかに、この企ては、あの意味では、誇らかなものです。とにもかくにも、自暴自棄的なものですが、あなたはそれを征服してしまったのですから、この気持は最後に至って、十分な満足をあなたに与えて、そのほかいっさいの苦痛をあきらめさせてくれるでしょうよ……」
彼は一種の悪意を示して、きっぱりと言い放った。明らかに、わざとらしかったが、わざと冷笑的な調子で言ってやろうという気持を、隠すつもりさえもなかったのであろう。
「まあ、とんでもない、それはみんなたいへんな勘違いですよ!」とホフラーコワ夫人は叫んだ。
「アレクセイさん、あなたもなんとかおっしゃってください! わたしはあなたがなんとおっしゃるか、それが伺いたくてたまらないんですの!」とカテリーナは叫ぶなり、さめ
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