ホいいんです……」
「でも、どういうわけなの? どうせ君たちのほうから先にからかったんだろう?」
「ああ、また君の背中へ当てやがった。あいつは君を知ってるんだよ」と、子供は叫んだ、「今あいつは僕たちでなくって、君を狙って投げてるんだよ。さあ、またみんなでやっつけろ、スムーロフ、やりそこなったらだめだぞ!」
こうしてまた石合戦が始まったが、今度は前よりいっそう猛悪になってきた。やがて一つの石が溝の向こうにいる子供の胸に当たった。彼はきゃっと悲鳴をあげると、泣きながら坂をのぼって、ミハイロフ通りをさして行った。すると、大ぜいの者は「やあい、こわくなって逃げ出しやがった。やあい、ばか野郎!」と喊声《かんせい》をあげた。
「あいつがどんなに卑怯なやつか、あんたはまだ知らないんですね、あいつは殺したって足りないやつです」と短い上着を着た少年が眼を光らせながら言った。仲間でいちばん年上の者らしかった。
「あれがいったいどんな子だって?」とアリョーシャは聞いた、「告げ口やだとでもいうの?」
子供たちはばかにしたように、互いに顔を見合わせていた。
「あなたもやっぱりあちらへ行くんでしょう、ミハイロフ通りへ?」と前の少年がことばをついだ、「そしたら、すぐあいつを追いかけて聞いて御覧なさい、……ほら、ちょっと、あいつまたじっと立って待ってますよ。あんたの方をじろじろ見てる」
「あんたの方を見てる、あんたの方を見てる!」と子供たちはすぐに引き取った。
「あのね、ひとつあいつにこう聞いて御覧、おまえはぼろぼろになった風呂場の糸瓜《へちま》が好きかって、ね、そう言って聞くんですよ」
すると一時にどっと笑った。アリョーシャは子供たちを、子供たちはアリョーシャをじっと見つめるのであった。
「いやだって言ったら、君はぶんなぐられるよ」とスムーロフが大きな声で警戒した。
「いや、僕はそんな糸瓜のことなんて聞きゃしないよ、だって、君たちはこの糸瓜でもって、あの子をからかってるのに相違ないんだもの。それよりは、どうして君たちがあの子をそんなに憎むのか、あの子に直接聞いてみるよ……」
「聞いて御覧、開いて御覧よ!」と子供たちはまた笑いだした。
アリョーシャは橋を渡って、垣根に沿うた坂道をのぼって、のけ者にされている子供の方へまっすぐに進んで行った。
「気をつけなよ」と子供たちは後ろから注意した。「
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