くって告げ口をせんし、内輪のあらを外へ持ち出すようなこともない、魚饅頭も手ぎわよく焼きおる、しかし、あんなやつなんぞ、ほんとにどうだってかまやせんわい、あんなやつのことをかれこれ言うがものはないよ」
「むろん、言うがものはありませんよ」
「ところで、あいつが一人腹の中で何か考えこんでおるというと……つまり、ロシアの百姓は一般にいうて、うんとぶんなぐってやらにゃならんのだ、わしはいつもそう言っておるんだよ、百姓なんてものは騙児《かたり》だから、同情してなんかやるには当たらん、今でもたまにぶんなぐる者がおるから、もったものだ、ロシアの土地は、白樺《しらかば》があればこそ、しっかりしてるんだ。森を切り払ってしまったら、ロシアの国もくずれてしまうのだ、わしは賢い人の味方をするなあ、われわれはひとかど利口ぶって百姓をぶつことをやめたけれど、百姓らは相変わらず自分で自分をぶっておる、それでいいのさ、人をのろわば穴二つ……いや、どう言ったらいいのかなあ……つまり、その、穴二つなんだ、全くロシアは豚小屋だよ、ほんとに、わしがどんなにロシアを憎んでおることだか……いや、ロシアをじゃない、このいろんな悪をだ……、しかし、それはロシアということになるかもしれない、Tout cela c'est de la cochonnerie(それはみんな腐敗からでるの意)いったいわしの好きなものがなんだか知っとるか? わしはその、とんちが好きなのさ」
「また一杯あけましたね、もうたくさんでしょう」
「まあ待ってくれ、わしはもう一杯やるよ、それからもう一杯やったら、それでおつもりにするよ、どうもいかんよ、おまえが途中で水をさすもんだから。わしはな、通りがかりにモークロエ村で、一人の老爺に尋ねてみたことがある、するとその老爺の言うには『わしらあ罰をくわえるとて娘っ子をひっぱたくが、何よりもいちばんにおもしれえだ、ひっぱたく役目は、いつでも若えもんにやらせますだ、ところが、今日ひっぱたいた娘っ子を、明けの日には、若えもんが嫁にするってわけさ、だもんだで、あまっ子らもそれをあたりめえのように思っとりますだよ』と、こうだ、なんというサード侯爵たちだろう? 全くうめえことを言いおったて、ひとつわしらも見物に出かけるかな、うん? アリョーシャ、おまえ顔を赤くするのかい、何も恥ずかしがることはないよ、坊主、さっき修
前へ
次へ
全422ページ中192ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
ドストエフスキー フィヨードル・ミハイロヴィチ の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング