うしてあの女にそんなことが言えるもんか?」
「それで、兄さんはどこへ行くんです?」
「路地へさ」
「じゃあグルーシェンカのところへですね!」アリョーシャは手を打って、悲しそうに叫んだ。
「では、ラキーチンの言ったのは本当だったのかしら? 僕はまた、兄さんはちょっと行ってみただけのことで、もう済んでしまってるのだとばかり思っていたのに」
「許婚の男が、あんなところへ行くんだって? そんなことができるもんかい? しかも許嫁がいて、みんな見てるところでさ? おれにだって少しは廉恥心があるはずだよ。ところが、グルーシェンカのところへ行き始めると同時に、おれはもう許婚でもなければ、誠実な人間でもなくなってしまったんだよ。それはおれにもわかってるのさ。どうしてそんな眼でおれを見るんだい? おれは最初、ただあの女をひっぱたきに行ってやったのだよ。それは、親爺の代理人をしてやがるあの二等大尉のやつが、おれの名義になっている手形をグルーシェンカに渡して、おれが閉口して手を引くように告訴してくれって頼んだということを、聞きこんだからだ。それが確かなことは、今でもわかってるよ。おれを脅かそうとしやがったのさ。だから、おれはグルーシェンカをぶんなぐりに出かけたのだ。前にもおれはあの女をちらっと見たことがある。だが別に気にも留めなかったのさ。今病気でひどく弱りこんで寝ているが、とにかくだいぶんの金をあの女に残すらしい例の老いぼれ商人のことも知っていた。それからあの女は金もうけが好きで、ひどい高利で貸しつけてはどしどし殖《ふ》やしていることも、情け容赦もない悪党《わる》の詐欺師だって話も聞いていた。で、おれはぶんなぐりに出かけたのだが、そのまま女の家に神輿《みこし》をすえてしまったのさ。つまり、雷に撃《う》たれたんだ。黒死者《ペスト》にかかったんだ、いったん感染したっきり、今だに落ちないんだ。もうこれでおしまいなんだ、どうにも変わりようがないってことは、おれにもわかっている。時の循環が完了したのだ。まあ、こんな事情《わけ》さ。ところが、ちょうどその時、おれみたいな乞食のポケットに故意《わざ》とのように三千ルーブルという金があったのだ。で、おれは女を連れてここから二十五|露里《エルスター》あるモークロエ村へ出かけて、ジプシイの男女を集めるやら、シャンパンを取り寄せるやらして、村の百姓や、女房や娘
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