から、わたくし共はブランを穴の中へ入れて、上から土を掛けました。
丁度船を漕ぎ出すと、月が登つて来ました。わたくし共は互に顔を見合せて帽を脱いで礼をしました。背後《うしろ》の岸を見返ると、樺太の岩山がごつ/\してゐて、その上にブランの落葉松の枝が靡いてゐたのですね。」
八
「シベリアの岸に着いて聞けば、サルタノフが残酷に殺されたといふ話が、もう土人にも知れてゐるといふ事でした。風が吹き伝へでもしたやうに、この風説は広まつたのです。同志の者は漁《すなどり》をしてゐる二三の土人に出逢つて、その口からこの話を聞いた時、土人等は首を振つて、変な顔附をしました。その顔附は内々喜んでゐるといふ風に見えました。わたくし共は腹の内で思ひました。沢山笑ふが好い。己達はどうなるか分からない。事に依るとサルタノフの首の代りに、この首を取られるかも知れないと思ひました。
土人はわたくし共に肴《さかな》をくれて、こんな道もある、こんな道もあると逃道を教へてくれました。それを聞いてわたくし共は歩き出しました。なんだかおこつてゐる炭火の上を踏んで行くやうでした。物音がすると、一同びつくりする。人家
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