はり》を見廻すと、ブランがわたくしの上にかぶさるやうになつて立つてゐて、目をきよろきよろさせて、森の方へ指ざしをして、かう云ふのです。「起きないか。来やがつた。連れ戻しに来やがつた。」
わたくしがその指ざしをしてゐる方を見ますと、木の間に兵隊がゐるぢやありませんか。
その内の一人で、一番前にゐるのが、銃でこつちを狙つてゐます。今一人はこつちの方へ駈けて来ようとしてゐます。その跡から山を下りて来掛かつてゐるのが三人あります。皆銃を持つてゐます。
わたくしは直ぐに気分がはつきりしました。そして大声で同志の者を呼びました。同志の者は皆同時に起き上がりました。そしてさつき狙つてゐた兵卒が射撃をしてしまふや否や、みんなで向うへ飛び込んで行きました。」
ワシリは逆《のぼ》せたやうな顔をして黙つて、俯向いた。余り熱心に話して、薪をくべる事を忘れたものだから、煖炉の火が燃えなくなつて、天幕の内は薄暗くなつてゐる。
ワシリは訟《うつた》へるやうな調子で云つた。「一体なんだつてこんな話をし出したのでせう。」
「どうでも好いぢやないか。しまひまで話してくれ。それからどうしたのだ。」
「それからです
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