した。
「人の話で聞いて来たが、お前様は人の病気をなおしなさるそうだが、どうかこの手をなおしておくんなさい。わしゃ一人じゃ靴もはけないからな。」
とそのばあさんは言いました。
「いいとも、いいとも。」
とイワンは言いました。そして、例の木の根っ子をくれてやって、それをのめとおばあさんに言いました。乞食ばあさんは、それをのんで、なおりました。手はわけなく動かすことが出来るようになりました。
父親と母親は、イワンについて王様のところまで行くつもりで、やって来ましたが、イワンがその根っ子をやってしまって、お姫様をなおすのが一本もなくなったと聞いて、イワンを叱りました。
「お前は乞食女をあわれんで、王様のお姫様をお気の毒とは思わないのだ。」
と言いました。しかし、イワンは、王様のお姫様もやはり気の毒だと思っていました。それで、馬の仕度をすると、荷車の中に藁をしいてその上に坐り、馬に一むちくれて出かけようとしました。
「どこへ行くんだ、馬鹿!」
「王様のお姫様をなおしに。」
「だがお前はもう一本もなおせるものをもっていないじゃないか。」
「ううん、大丈夫。」
とイワンは言いました。そして馬を出
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