わない。ひとつ今度は麦束の中へ入って腐らしてやれ。」
そこで小悪魔はライ麦の畑へ行って、麦束の中に入り込みました。麦束は腐りはじめました。小悪魔は、麦束を暖めましたが、やがて自分のからだもぽかぽかと暖くなって、ぐっすり寝込んでしまいました。
イワンは馬に草をやると、用意して妹と一しょに、ライ麦を運びにやって来ました。やがて麦束を積みはじめました。二束ほど車に投げ込んで、三束目を上げようとして熊手をつき込むと、その尖《さき》が、小悪魔の背中へ、突き刺さりました。熊手をふり上げてみると、その尖にはしっぽの切れた小悪魔が、のがれようとして、しきりに身をもがいて、のたくっています。
「おやおや、また出て来やがった。」
「いや、ちがうんです。先来たのは私の兄弟です。私はあなたの兄さんのシモンについていたんです。」
と小悪魔は言いました。
「ふん、どいつだってかまやしない。お前も同じ目にあわしてやるのだ。」
イワンは小悪魔を荷車へたたきつけようとしました。小悪魔は叫びました。
「ま、待って下さい。二度とあなたの邪魔はいたしません。あなたの言いなりに何でもいたします。」
「じゃ、何が出来る。」
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