絵を引受けました。ところがまたこの※[#「插」でつくりの縦棒が下に突き抜けている、第4水準2−13−28]絵でも北斎がその天才的な創作力に依ってあまりに新意を出し過ぎるものですから、遂に二人は再度衝突し、馬琴が末段の方の一つの※[#「插」でつくりの縦棒が下に突き抜けている、第4水準2−13−28]絵の削除を主張したのに対し、北斎は※[#「插」でつくりの縦棒が下に突き抜けている、第4水準2−13−28]絵全部の返却を強要して、又々書肆を板挾みの苦しみに陥れました。が、書肆の死物狂いの奔走で、辛うじて両方のつむじ曲りを調停させたということでございます。
芸術家は天才になればなるほど、芸術的自我の熾烈なものであり、そこに彼等の価値もあれば、尊さもあるわけでございますが、そうした優れた芸術家の歴史に有名な逸話の実際の結晶である絵本類がそのように容易《たやす》く、今日の古雑誌を購うのと同様に買い取れたかと思うと、世知辛くなかったその時代のことが一層懐かしまれるではありませんか。
底本:「青眉抄・青眉抄拾遺」講談社
1976(昭和51)年11月10日初版発行
1977(昭和52)年5月31日第2刷
初出:「塔影」
1933(昭和8)年5月
入力:川山隆
校正:鈴木厚司
2008年7月9日作成
青空文庫作成ファイル:
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